山田:茅原さんご自身が、商標を出願する場合、ただというか、手数料は要らないわけじゃないですか。ご自身で出して取った商標ってあるんですか?
茅原:今「知財コンシェルジュ」という商標を取っているのと……
山田:「知財コンシェルジュ」は通るんですか。
茅原:通ります、というか、今は難しいかもしれないけど、僕は「通る」と思って出したら、やっぱり一発で通って。
山田:へえ。それは何で通るんですか? 何かありそうじゃないですか。
茅原:うん。そこら辺が難しいところで、一般的に使われ始めちゃうと駄目なんです。だから、早い者勝ちなんですよ。
山田:ああ。まだそんなに普及していないけども「何ちゃらコンシェルジュ」的なのって今はいっぱいあるじゃないですか。
茅原:うんうん。怖い話で、今、皆さん「朝活」とか使っているじゃないですか。
山田:「朝活」、ありますね。
茅原:あれ、取られているんですよ。
山田:誰に?
茅原:大阪の人だったかな。
山田:誰だろう。へえ。
茅原:だから、本当はセミナーとかやるときに「朝活」とか書くと怖いですよ。
山田:そういうのって「やめてください」と来るんですか、それとも「金払え」って来るんですか。
茅原:相手がお金持っている人だったら「金払え」でしょうね。
山田:相手を選んでやるんですか。
茅原:でしょうね、多分。まあ、別に「朝活」を使わなきゃいい話ですから。
水野:商標を取ると得だ、というのが広まってくると、そういうことをする人がこれから増えてくるんじゃないですか。
山田:逆に弁理士業界的には儲かるという話ですよね。
茅原:うん。
水野:さおだけ屋も、本が売れると「さおだけ屋の何たら」とかの商標を取っちゃう人が出てきたりとか。
山田:出てきていたのかもしれないですね。僕はもう分からないですけど。だから、結構、微妙な話、すごい本当は怖い業界でもあるんですよね。
茅原:怖いですね、本当は。本当は怖いので、だから、知ってほしいということで出した。
山田:本当は怖い……。
茅原:でも、本当はそっちのほうが書きやすいんですよね。
山田:そういう本は既にあるんでしょうね。ないのかな。
茅原:そんなに突っ込んだ本は、まだないですね。
山田:本にこだわらず、何かそういう活動って面白いですね。「どこまで取れるか」みたいな話って。
山田:「知財コンシェルジュ」の他には何か?
茅原:つい最近、「わらしべ長者の会」というのを取って。
山田:取れたんですか、それ。
茅原:取れました。
山田:「わらしべ長者の会」は、それこそなぜ取れるんですか。何の方面で?
茅原:セミナーとかの分野です。だから、これから交流会をやろうと思っていて。
水野:何をしようとしているんですか。その「わらしべ長者の会」。
茅原:「わらしべ長者の会」というビジネス交流会をやるんですよ。先ほどお渡しした名刺にもあるように、私の事務所名が、わらしべ特許商標事務所といって、わらしべから始まって成功を導くような、そういう。
水野:なるほど。
山田:わらしべ……。「わらしべ長者の会」だから取れたのか「わらしべの会」でも取れるんですか?
茅原:どっちでも取れます。
山田:ほう。「わらしべ長者」でも取れるんですかね。
茅原:「わらしべ長者」でも取れるかもしれないです。
山田:あら。
茅原:かもしれないですけど、それは分野によりますよね。それで、今、初めて言いますけど、この本が売れることを願って「佐藤の日」というのを今、出願しているんです(笑)。
水野:そんなことしていたんですか(笑)。
山田:「佐藤の日」はこれまでなかったんですか。
茅原:今までないですね。
山田:聞いたことはないです、確かに。
茅原:駄目もとなんですけど。もしできたら、「佐藤の日」というのを、佐藤だけに3月10日にして…震災が次の日なんです。
山田:あら。
茅原:でしょう? 3月11日。毎年3月10日になったら「佐藤の日」で、佐藤関連の人たちを集めて、東京ドームでイベントをやりたいなと(笑)。
山田:(笑)。ああ、佐藤さんと佐藤姓の有名人が集まり。
茅原:そうそう。ということを、ちょっと考えていまして。
水野:それは新しいビジネスですね。
山田:そうですよ。全部の名前の日を取っていって。
水野:それ、面白いですね。
山田:ほかで「佐藤の日」をやろうものなら「310万払ってください」から始めて。
水野:(笑)。佐藤だけに。
茅原:ある特定の分野ですけどね。うちらの業界というのは、仕掛けるのは早めじゃないと駄目なんですよ。考えたら、使われているか使われていないかをネットで見て「ああ、これは使われてないやつだ」となると、ぱっとすぐ出さないと。
山田:ああ、そうか。昔はそれを調べるのも弁理士さんの仕事だったんだと思うんですけど、今はそれはネットで誰も見られて。申請自体は素人もできるんですか。
茅原:できます。
山田:でも、弁理士さんを通したほうがやっぱり全然違う?
茅原:やり方が分からないとか、あとは、この本で書いてあるんですけど、商標の話で言うと、目印ってただ単に取ればいいんじゃなくて、ちゃんと将来を見越して、何かイメージがあって取らないと意味がないんですよ。ただ単に「これ、ネーミングがいいのよね」で、ぱっと取るという話ではなくて。だから、何か考えたらぜひ(笑)。
水野:何かご提案したみたいですね。山田さんが取ったら良さそうな商標とか。
山田:糸井重里事務所で働いていたときに、糸井さんは、結構、片っ端から商標を取っているんですよね。倉庫のファイルとかを見たら、本当にいろいろな商標を、大きな紙に商標をぽーんと書いた紙がいっぱいあって、年間、結構払っていたんじゃないのかな。
茅原:でしょうね。
山田:年間で払うんですか。
茅原:年間というか、10年間。
山田:10年間ですか。毎年、結構な金額を払っていて、何でかなと思ってたんですけど、やっぱり言葉にこだわる人というのは、その辺はすごく大事にされるんですよね、きっと。
茅原:そうですよね。
山田:会計の人間からすると、もったいないというか。
茅原:でも、化けますからね。会計の分野とちょっと違うのは、全くゼロのところから、世の中の状況によって変わってくる。「ゆるキャラ」はみうらじゅんの商標だって知っていますか?。
山田:そうなんですか。みうらじゅんさんが「ゆるキャラ」の生みの親ということは知っていますけど、商標も取っていらっしゃいましたか。
茅原:出版社と一緒に、扶桑社だったかな。商標を取っていますね。ただ、分野がありますけどね。
山田:結構、僕らは気軽に「ゆるキャラが」とか、「ゆるキャラが好き」とか、「ゆるキャラフェア」みたいなイベントもいっぱいあるじゃないですか。あれは、何らかの形で、もしかしたらお金が還流しているかもしれないですかね。
茅原:可能性はあります。分野によってはね。
山田:みうらじゅんさんは、すごい大金持ちなのかもしれない。
茅原:(笑)。でも、そういうことをやることによって「ゆるキャラ祭り」みたいなものもどんどん出てくるじゃないですか。だから、一つのものが出てくると活性化してくるんですよね。そういう面でも何か……。
山田:ああ、そうですよね。要は、広まったらいいという話じゃなくて、そこである種、統制する人がいないとブランドが保てないとか。
茅原:そうです、まさにそうなんです。
山田:飲食だと、味が落ちるとか、イメージがかち合っちゃうというのもありますもんね。
茅原:そうなんですよね。だから、この最後のほうにあった、地域活性化の商標なんかでも、宇都宮餃子、これもやっぱり宇都宮餃子を守る、ということで取るわけですよね。